このCBという私設研究所にいるマイスターでオトナであるのはロックオンだけだ。感情を素直に表現し、また純潔を表すミミが落ちたのはもう十年も前。ここにいるロックオン以外のマイスターはとうにそのころの年齢を越えていてなおひょこひょこミミが震えるのを見るとなんとなく微妙な気分になる。言外に責められている気がするのだ(あくまで被害妄想だとうれしい)。
同時に純粋なサクリファイスもまたロックオンだけだ。この研究所では戦闘機に関する研究がメインなのでサクリファイスはひとりいれば十分で、片割れとはぐれて久しいロックオンは適任だった。
CBの戦闘機は三人。その内、人工のがふたり、自然発生がひとり。問題はその全員が特殊なことだ。
一番付き合いの長いティエリアはCB生まれで、どう遺伝子が変わったのか0にはならずに新たな名前を得た。サクリファイスを自由選択できるその名の特性を活かして現在はロックオンをパートナーとして出撃している。ただ名前が異なることで絆はうすく、絶対的な攻撃力に欠けるために実戦向きではない。
片やアレルヤはロックオンが研究所に来て七ヶ月に加わった。彼はべつの研究施設の生まれで、戦闘機がもつ最大のネック――サクリファイスを伴わない単独闘争が可能だ。それはサクリファイスに課されるダメージのすべてを副人格ハレルヤにトレースし、特殊な脳波で戦闘機側の人格にはフィードバックさせないという理論に基づいている。ただ、アレルヤは戦闘機にしては敵機を傷つけることを厭い、ハレルヤは攻撃的すぎた。重ならないそれはただの思考ノイズで、戦闘機の負荷にしかならないということで破棄されたのを保護したのだとロックオンは聞いている。
どちらの境遇も非人道的で許しがたいものだがどちらもそれで納得しており、それをあえてつつくことなどできはしない。よけいな葛藤は与えないほうがケアになることもあるのだ。
さて、最後のひとりにして新入りである刹那は感情的な意味合いでかなしい境遇にあった。彼はサクリファイスによって後天的に戦闘機になされたものだ。ひとりのサクリファイスに多数の戦闘機は理論上可能であるが実例は今までないとされていた。異なる名前やうすい絆はどちらにとっても苦痛でしかないからだ。しかし、現実にそれはあり、最終的に刹那はサクリファイスに捨てられたのだという。CBに来たばかりのころの彼はとてもかわいた目をしていて、あんまりなそれに同情さえ浮かばなかったのを覚えている。
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ただし続きません
アレハレとリジェティエがゼロにしかならない罠
天然ものカモン!!
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