しゃきん。刃をひろげたハサミになんとなく首をはさんでゆるゆる閉じる。ひやりとしたのを感じたなら一時停止、しばらくしてからもう一度ひらけるところまで刃を動かす。そして静止。思い出したみたいに今さら過ぎる鏡に映るあられもない状況をにらみつけた。
ハサミは昔から比較的好きなもので。今考えてもだいぶな危険思考なのだがカッターナイフよりも身近でより危険なそれは刃が二枚というフォルムと相まってお道具箱の住人のなかでも一等お気に入りだった。同等の理由でカトラリーならばナイフよりフォーク、フォークよりもスプーンだ。スイカをくり貫く要領で目玉が取れると知ったときはグロテスクながらもむだに感動してしまった。
首をはさんだところで切れはしない。皮膚というのは意外に丈夫だ。熱湯をかぶったところで爛れるだけで治癒していくし、肉を削いだところでそのうち治る。刃はすべらなければ切れない。だからこの行動に意味はない。
ハサミの銀色に茶がかった髪が重なってうっかりしたら切ってしまいそうだ。自分としてはどうでもいいけれどこのくるくるした髪を気に入っている奇特な人間がいないでもないからそれなりに気を使っていて。
「けっきょくは戯言なんだけど」
つぶやいてハサミを下ろす。鏡に映る人間も首からはなしたから、とりあえず彼を殺さずに済んだ点はいいとしておこうと思う。閉じたハサミの刃をつかむ。ひやりとつめたいそれを背後の壁に投げつけた。まだ死なない。
スザクでもニールでも
ハサミが好きなのはわたし
でもスプーンよりフォークが好き
PR