ルークの記憶は淡いみどりの色からはじまる。実際にはほかにも色が混ざっていて、ものにたとえるならケテルブルクかロニール山脈でときどき見ることができる極光(オーロラ)というものに似ているそうだ。だがそのひかりが極光でないことはルークも知っている。人間でも生まれる前の、母胎にあったころの記憶を持っていることがあるのだというのだからたぶんこれはルークが製造されている過程のものなのだろう。
ルークは生体レプリカだ。ひとによって製造された複製人形で、その能力は原型となった被験者よりも劣る。人為的につくられた劣化生物であると同時にルークは一種の第七音素意識集合体とも呼べた。髪のひと筋、血の一滴に至るまでルークは第七音素で構成されている。音素意識集合体とは一定の音素が凝りかたまってできたものであるとされ、刷りこみ(インプリンティング)を受ける以前から自我を持っていたルークは第二の第七音素意識集合体として世界に認識されていた。
かくいうルークはつい先日音素乖離を防ぐための疑似羊水から出されたばかりだ。被験者の五八番目のレプリカであるルークは完全同位体だった。発生確率は天文学的数値。しかしその分だけ乖離しやすいためルークは自分と同じものがべつの水槽内で日に日に還るのを見ていた。音機関に属する譜業であるその水槽は乖離して空気中に拡散しようとする音素を閉じこめている。
レプリカが分解された第七音素を再利用してレプリカを製造することで先天性素養が引き継がれる。
現在提唱されている音素親和素養は生まれた月、生まれた曜日に準ずるというものだ。当然後天的に親和能力を得ることは可能だが生まれながらの属性は決定している。ただしそれは第一から第六音素に当てはまる法則であり、第七音素に関しては天賦の才だ。正確な人数を把握できるほどしか存在しない第七音譜術士だがそのうちの多くがローレライデーカンの生まれだ。この先天特化は人間に多少なりともふくまれる音素が生まれ月を司る音素集合体の祝福を受けるからだという。音素授受(アナシエーション)論というこの仮説を打ちたてたのは音素研究の権威であるクーガー博士だ。生体フォミクリーの第一人者であるバルフォア博士と肩をならべる彼こそがルーク製造の指揮を執った人物だ。もっとも、ルークが彼を見たのはまだ水槽内にあったころのことで最近では博士の実子である双子にかまわれている。
アルエット・クーガーとエリオット・クーガー。
思わず被験者とレプリカの関係なのではという考えを捨てきれないほどよく似通った男女のきょうだいだ。博士と同じ目の色で、博士とちがう髪の色。ふたりとも白衣を着ていてルークにさまざまなことを学習させた。アルエットは譜術や医術を。エリオットは一般常識や生活の知恵を。時おりやって来ては体術を仕込んでいくグランツ氏をのぞけばルークの世界はそれだけだ。それから被験者。名前も顔も知らないが(否、おそらくはルークという名前で同じ顔をしているのだろうけれど)存在は認識している。
生まれた意味など知らなかった。五七人の自分の代わりにできあがったルーク。被験者のための身代わり人形。だがそれはつくられた理由。意味などではなくて。
ルークの記憶は淡いみどりの色からはじまる。たぶん製造されている過程のもおの。記憶をくりかえすたびに気づかされる。耳鳴りのような叫び声。自分ではない、自分を構成する自分の音素がないていた。けれど自分はなくばかりで、ルークはなぜなくのかがわからなかった。
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受験期に手書きしていたTOAが出てきたので打ちこんでみた
なんだろう、逆行ってか捏造ってかスレ系?
自分なりに譜術の原理を解明していた資料があって笑えた
あと3つくらいあります<勉強しようぜ受験期<授業中ひまだったから
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