「食事は食堂か自販機のレーション、それか自炊ね。材料は事前に申請すれば部屋に補充されるわ」
「あなたはどうしているんですか」
「わたし? 食堂を利用してるよ」
「なら、そうします」
「だめだよ。飛行機にも愛情を持たなくちゃ。それとも人間じゃないから愛せない?」
「はい」
「そっか。じゃあ訊くけど、彼らと人間のちがいってなに? どこがちがう?」
「彼らは機械です。ぼくたちは、人間です」
「種族的な解答だ。じゃあ彼らは生きてない?」
「はい。彼らは生きているように見えるだけ、彼らの外部CPUがそう見せかけるだけです」
「それなら人間も生きていないことになるよ」
「それは、詭弁だ」
「そう、詭弁。でもそういうことなんだ。人間が特権階級にあると思うのが問題なの。彼らも人間も二足歩行型哺乳類のボディがあり、思考・制御および演算機関が頭部にあって、学習したことを蓄積する。大差なんて中を見なくちゃわからないよ」
「でも、彼らは人工物だ。自然じゃない」
「人間だって人工的にできるものだよ。まあ最近では意図的でなく過失でできるほうが多いから彼らよりも性質がわるいかな」
「どちらもヒトから生まれたの。同じエイドス、ちがうのはヒュレーだ」
「図書室の地下にフィルムがあるの。知ってる?」
ぼくは首をふる。そもそも、この基地に図書室なんてあったのか。
「アニメーションなんだけど、飛行機乗りの誇りと罪悪について語った作品があるよ。主人公は人間でいるのがいやになってら魔法で豚になってしまった赤い飛行機乗りなの」
「観て、飛べるようになるなら、観ます」
「うん、どうかな。もとは娯楽作品だっていうし、やっぱり古典だから」
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