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そこにはなにもなかった。 死んでしまった珊瑚が波に長い年月をかけてけずられ、すこしずつたまってできたという白い砂の道からは見えるカンバスには濃いマリンブルーの海と、うすいスカイブルーの空がずっと向こうで重なっている。さわれてしまいそうなそれらは一日かけてもたどりつけないほど遠くにあって、ユーフェミアは手を伸ばすかわりに自転車をこぐスザクの腰に腕をまわした。ぎゅ、とわずかに力をこめれば、ふわふわした茶色い頭がふりかえる。 「どうかした?」 「ううん」なんでか気恥ずかしくて、ユーフェミアは少年のそう広くない背中におでこを押しつける。「なんでもないの」 さんさんとした日差しはとてもあかるくて、海から吹いてくる風が気持ちよかった。記憶にあるようなべたつく感じはまったくない。もしも心配性な姉がいたのなら帽子をかぶりなさいとか、日焼けがどうとかいうのだろうけれど。 「なあんにもないのね」 「そうだね」さしてつかれた様子も見せずに坂をのぼり、口元だけでスザクが微笑む。「たいくつ?」 「ぜんぜん」