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接ぎ木

2025.04.07 Mon 「 [PR]
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2008.07.07 Mon 「 プレ・サマーoriginal
 ここ一週間ほど雨が降っていない。小学生以下の子どもにはうれしいどっぴいかんが連日でつづいているのだ、これでだれないほうがおかしい。それに加えて県立高校の教室にエアコンは設置されておらず、授業の中休みのたびに自動販売機や近所のコンビニは大繁盛。年を取ると暑いのも寒いのもいやになるものだ。
「……あつい」
 もちろんそれは寿々も例に漏れない。クラスメイトとちがってアイスやら水分やらを買いに行かないのは椅子から立ちあがる体力すら根こそぎ削られているからにほかならない。片頬を机にべったりとつけたままぴくりとも動かないでいる。
「すず姉、ほんとに暑いのだめだよな。今日なんてまだ二十五度越えてないし、肌寒いくらいだと思うんだけど」
 あきれたように笑うのは双子の弟である永だ。に笑いながら水滴がびっしり浮いた青い缶をふたつ、寿々の顔の横に置く。今は昼休みだから教室内はがらがらだ。永は遠慮のかけらも見せずにすぐ前の椅子を引いた。
「……細胞のころから一緒なのにそういうこと言う、ふつう」
「無添加で純度百パーの愛ならある」
「いらない」
「うっわ、即答かよ。すず姉ったらひっどー。おれ、泣くよ?」
「いいよ、べつに。きもくて愉快だから」
 がんがんに冷えたスポーツ飲料の缶を頬にあてて熱を下げながら寿々はなんでもないように言う。というかなんでもないことだ。いいかげんおたがいが飽ききっているやりとりにつきあうほど寿々はひとがよくない。永のサービス精神がよすぎるのだ(そもそも見世物じゃない)。
 効果音をつけるならトッカータとフーガといった様子の永を黙殺し、ある程度まで回復した寿々はいそいそと横にかけておいたビニル袋の中身を引っぱり出す。
 拳より小さい焼きたらこのおにぎりがひとつ。ツナオニオンとたまごのサンドイッチがひと切れずつ。ラップでつつんであるのは自作ゆえ、コンビニ袋なのは単純に放置してあったからだ。
「いただきます」
 儀式的に手をあわせ、寿々は海苔でまっくろな物体に噛みついた。今朝は暑くて起きられなくて時間がなかったので適当ににぎってきたのだが案の定しょっぱい。たらこの塩気をばかにしていた。
 頭のなかで流れはじめる某たらこの歌をふりはらい(よくよく考えればあの状況ってこわい!)、缶のプルを引っぱりつつ寿々は弟を見る。
「で、なんであんたはナチュラルにひとの飯食ってるわけ」
「二限に早弁したら腹減った」
「これについでに買ってくればよかったじゃない」
 缶の腹を爪ではじいて、寿々。対する永は背もたれに腕をからませてサンドイッチを食いちぎった。
「ひとがごみのよう、略してひとごみ」
「たしかに」
 うんざりした物言いにうなずいた。わざわざあんなところにつっこむのは死にに行くのと同じだと思う。
 もそもそとおにぎりを飲みこみ、寿々は残っているサンドイッチを手に取って、
「はーるかちゃん」
「なんでっしゃろ」
「なしてわたしの好きなほう食べるかな」
 にこりと小首をかしげてみせれば、永は「んー」と缶に口をつけながら意味もなく窓の外を見やる。寿々の席は窓際の最後尾で、一番風の通りがいい場所だ。夏の間の定位置。
「おれがコロンブスきらいだから」
「意味がわからない」
「素直に言ったら誤解招きそうじゃん」
「招くだけ招いて追い出せよ」
「めんどい」
「根性なし」
「うるせえ」
 永が机を蹴った拍子で缶の水滴が飛んだ。なんとなく気分が沈む。寿々はラップをコンビニ袋につっこんで口を結び、ずれたところにあるごみ箱に放った。こういうとき後ろって便利だ。
「もういっそ溶けたいかも」
 食べたら余計に体力が減った気がした。さすがに人目があるからスカートをばさばさしてあおぐわけにもいかず、寿々はせめての抵抗で机に上半身を投げ出す。




―――――
暑かったんです。
書いていてほんとうに思う。わたしの子たちって基本的に根幹がいっしょ。いやどれも我は強いけれど。
しょーもないくらいだれも似てないのは「無題」派生シリーズの子たちだわな。
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